古箪笥 再生・修復(修理):事例6 ばあさんが帰って来た
ご依頼主さまのお母様がお使いになられていた箪笥です。
FAX用のお問合せフォーム をダウンロードし、連絡先と内容をご記入いただきFAXして下さいました。
「95歳で亡くなった母の箪笥を修理したい」
問い合わせ内容の欄に大きき書き込んでいただきました。
この一言で想いがこちらにも伝わってきます。
このFAXを受取った後 お電話を差し上げ、概算見積・引取りの日程などについて相談させていただきました。
引取り後、修理箇所のチェックを行い正式なお見積を発送。お手元にお見積が届き、ご確認後 修理作業に掛かって行きます。
3段積みの桐の箪笥です。
ぱっと見は、修理箇所が少なそうですが・・・
2段目の横長の抽斗が2箇所
奥まで押し込むことができません。
(白矢印<←>部 )
お分かりでしょうか?
板が大きく反っています。そのため抽斗の前面が当たり納まらないのです。
「ここには多くの着物を入れていたので・・・」とご依頼主。
修理内容を数値化し金額に
換算します。
(画像をクリックすると大きくなります)
今回は、全ての金具を交換します。
金具交換に掛かる費用と若干の経費が加算されます。
修理において、最大の難関は着物が入っていた抽斗。板の反りを直すこと。
ここは抽斗を受ける板を交換しなければなりませんでした。
修理前と修理後の3段積み2段目の抽斗の様子。
左:修理前 抽斗が納まりきってないのと抽斗と枠の間に隙間(黒い部分)が目立つ
右:修理後 抽斗がきっちり納まり、隙間も目立たない
今回は塗装の色目もご指定いただいたので、植物油ベースのカラーオイルを使用しました。
塗装完了後、新品の金具を取り付け修理完了です。
お客さまへ修理完了した箪笥をお届けします。
箪笥の正面に座られたご主人が直った箪笥を見つめながら
「ばあさんが帰ってきたなー」
と奥様に語り掛けられます。
この言葉に私は、仕事をやり終えた満足感とは違う感動を覚えました。
お母様は亡くなってしまったが、その面影や想い出はいつもここにある。
お母様が日々の生活を見守って下さいます。
そして、実はこの箪笥の左側に少しスペースが空いています。
ご主人が、
「これも直して下さい。たぶん作られて80年くらい経ってると思います。
おやじが使っていた書棚です。これだけが残ってました。」
鏡板に綺麗な杢の板が使ってある書棚でした。
この書棚を箪笥の横に並べるそうです。
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上記修理費用