古箪笥 再生・修復(修理):事例5 30年ぶりの再会
修理依頼の箪笥は九州から、クロネコヤマト の らくらく家財宅急便 で届けられました。
大きさは 70cm×70cm×30cm (Bランク)ですから 九州から中部(岐阜) ですと
配送料は なんと ¥4,600 です。梱包はヤマト運輸さんが行ってくれます。
(*送料やオプションサービスが変更になっています。詳しくはヤマト運輸さまのホームページでご確認下さい)
外観はかなりくたびれています。
修理箇所を抽出し、お客さまに修理費用の内訳を理解していただきます。
合わせて修理の方法を考えそれを数値化します。
その数値に単位あたりの金額を掛け、修理費用を算出します。
そうして作ったお見積りをご依頼主にご提示し、納得いただいてから修理に掛かります。
今回はこれにほぼ全部の金具を交換するため、金具交換に掛かる費用が加算されます。
お預かりした箪笥は、ご依頼主さまが独身のころ身の回りの整理に適していたので使っておられた
そうです。この箪笥は、おじいさまが使っておられたもので言わば形見ですね。
ただ、早くに亡くなられお顔は知らないままだったそうで、おそらく箪笥におじいさまを感じていらっしゃったに違いありません。
修理に入ります。
大きなキズや板の縮み、そして金具の腐食が目に付きました。
修理箇所を洗いだす中で、天板、側板の前面は長く切り取って、新たに取った幅の材料を接ぐことに決めました。
しかし、接ぐには板の状態が作業はし易いのです。
詳しく見てゆくと、分解できそうです。上手く作ってあります。
思い切ってバラバラに分解しました(ここはあえて、写真は撮りませんでした。製作された時代により
構造などもさまざまです。見る人により価値観も違いますので・・・)
使えるもの、使えないものがでてきますが、おそらく作られてから80年から100年は経過しているので仕方がないです。
板の接ぎ合わせが出来たところで、順番に組み立てます。
正面の板の縁に真直ぐな線がつながりました(角が綺麗に立ちました)。
中の板もほとんど新しい板に張りなおしました。ここで注意しなくてはいけないのが
おそらく常に空調の効いた部屋で使われること。
十分に乾いた板を選び、尚且つ、板が縮んでも良い様に取り付けます。
張り直された内部の板。そして、側面の板の木目が良いです。材料は杉の様です。
おそらく屋久杉とは行かないでしょうが、それに近い天然の良質の材料だと思います。
抽斗の鏡板(正面の板)は桐で、全て軽く鉋を掛け新しい面を作りました。
塗装を行い、新しい金具を取り付け修理完了。
5/23 お客さま(以下 Eさんとお呼びします)の元へ、お届けにあがりました。
「届くのが本当に楽しみでした。実は、30年振りの再会なんです。」とEさん。
結婚とともにEさんは九州のご実家から愛知県に嫁がれ
これを期におじいさんの箪笥はご実家に眠ったままになったそうです。
金具に付けたものは、い草ロープです。車で移送中金具がゆれてキズが付かない様に配慮しています。
(以外とさまになっています)
実は、修理にあたり「ここは再現できない、しかし残さないといけない」と思った場所があります。
飾り金具がたくさん付いた扉です。
案の定、同じサイズの金具はありませんでした。
ここは、おじいさまを感じる顔だったに違いありません。
「再現できないなら、残さねば・・・」
余っていた材料を使い額装しました。
これで昔の様に、おじいさまを感じていただけます。
Eさんには、たいへん喜んでいただけました。
ありがとうございました Eさん。
直った箪笥を見られた時の嬉しそうなお顔、忘れませんよ。
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上記修理費用
・修理内容は上記表参照下さい
・表中に無い作業
→内部板張替え
・塗装
→オイルフィニッシュ(リボス)
・金具交換
→ほぼ全部
*扉額装はサービス
修理価格
¥130,000-